おかねばあさんと大蛇

神奈川県相模原市緑区


昔、おかねばあさんは長尾から八王子の市まで買い物に行ったが、往復八里の苦労だった。その日も朝早くに出て急ぎ、歩き疲れて一休みしようとした。ちょうど道を塞ぐように手頃な松の木が横倒しになっていたので、腰を下ろすと、松の木がのろのろと動き出した。

松の木と思ったのは大蛇だったのだ。驚いたばあさんは半ば気を失いながら家に逃げ帰ったが、寝込んでしまい、遂にはあえなく一命を亡くしてしまったという。

『津久井の昔話 第三集』
(津久井福祉事務所)より要約

追記

津久井湖の南の長尾から、大山街道を経て八王子に向かう途中、ということだが、大蛇が出た場所は不明。枚挙にいとまなくある世間話だが、周辺障る大蛇の話が多く(「ムジナ穴の大蛇」など)、その一端、より日常的である事例として引いた。

また、枚挙にいとまないものではあるが、話の雰囲気の近さ遠さというのはあり、このおかねばあさんの話はなんとなく多摩地域で語られる雰囲気に似ている気がする(「浅間山の大蛇」など)。