外の御前の白蛇の話

原文:神奈川県相模原市緑区


相原の森下部落の西がわ、中野・八王子線の新道の脇に、「外の御前」の跡がある。何をお祀りしたものか、その由来ははっきりしないが、かつては社殿が建っていた。明治九年(一八七六)ごろのことであったが、毎晩のようにその建物の一部がなくなっていく。たとえば羽目板の一片とか、縁がわ板の一枚とかが見えなくなるという風にである。そこで近所の村人たちが不思議に思い、ある夜寝ずの番で見張りに立つことにした。

すると、ま夜中ごろ一匹の大木は白蛇がどこからともなく現われて来て、たるきを一本くわえて行く。そこでそっと跡をつけて行くと、部落を出はずれ、「さんや」を過ぎ、「おいせの森」を抜け、清兵衛新田の「原組」のところに出た。そしてそこに新田鎮守として祀ってある氷川神社に到着した。見ると、すでに運ばれてきた建物の資材が積まれていた。村人たちは「これは神さま同志の思召しで、外の御前の建物は、氷川神社へお移ししたいということなのであろう。」
と話し合って、神社の建物は清兵衛新田の方へ譲り渡すことにした。

現在の氷川神社の建物は、もちろん近年新しく建て替えたものである。

『増補改訂版 相模原民話伝説集』
座間美都治(私家版)より

追記