大杉に伝わる話

原文:神奈川県相模原市緑区


神様には、おつかえする動物がいる、といわれます。たとえば、おいなり様にはキツネ。天神様には牛というように……。

青根のおすわ様にも、二つの尾をもった「しろへび」がおつかえしていました。このしろへびは、おすわ様の御神木(神さまの木)である大杉にすみついていました。

むかし、上野田の子ども数人がお宮で遊んでいるとき、このしろへびを見つけ、石ころを投げつけてしまいました。その石がしろへびの目にあたり、とうとう片目がつぶれてしまいました。

そのころからです。

上野田のその子らの家の人も、青根じゅうの人々の目も、みんな片方だけ、小さくなってしまったのは……。

その後、代々生まれてくる子ぜんぶの片目が小さいそうです。きっと、しろへびがおこってしまったのでしょうね。

このしろへびは、今もなお、大杉にすむといわれています。病人の出た家では、はやくなおるように神様にねがって、大豆ひとつぶをもちいて、お百どまいり(夜、だれにもみつからないような時刻に、はだしで、お宮の鳥居と、神様の前を百回行き来して、おねがいすること)をしたそうです。

また、人にうらみをもっている人が、真夜中にまっ白な着物(白しょうぞく)を着て、ローソクの火で、お宮のけいだいに入り、そのうらみの人の代わりに、わら人形をもってきて、心ぞうのあたりを、くぎで大杉にうちつけ、のろいをかけたそうです。

のろいをかけられた人は、病気でなくても急に苦しみ出し、寝こんでしまうそうですが、のろいをかけた人も、やがては、苦しみ出す……といわれています。(『きょうど青根』第1集より)

『津久井町郷土誌』
(津久井町教育委員会)より

追記