お諏訪様の白蛇

原文:神奈川県川崎市多摩区


多摩区長沢

長沢で何かのため資産を失って貧乏になった家があった。いつまでこうしていてもうだつが上がる見込みが無いと、夫婦相談して夜逃げをする事になった。

永い間住み慣れたあばら屋に別れを惜しみながら夜中に発ってお諏訪様の前まで来ると、道に白蛇が横たわっている。避けて通ろうとすると、白蛇がじゃましてどうしても通る事が出来ない。夫婦は立ちすくんでしまった。ふだん白蛇はお諏訪様のお使姫だと聞いているのを想い出して、これはこの土地を立ち退くなとの神のお告げだと考え、そのまま引き返して元のあばらやに戻った。

その後何を作っても当たって、家計が幾分楽になった頃、神棚の奥から古い先祖の貸金証書が出てきたので、その借主から貸金のかわりに田地をもらった。それからはとんとん拍子に家運が開けたという事である。

『稲毛郷土史』二七〇頁

『川崎物語集 巻六』川崎の民話調査団
(川崎市市民ミュージアム)より

追記