宮司の葬儀に白い蛇が姿を見せる

原文:神奈川県川崎市中原区


ただあの、(日枝神社の)先代の宮司が死んだ時にねぇ、出棺の時にさぁ、あの、私達は、あの、火葬場まで行くんでね、すぐ車に乗っちゃったんだけど……。その、出棺の時に、ほら、大勢来てるわけでしょ、ほいでほら(上丸子)囃し連の子供なんかはさ、境内にいたんですよ。境内にいたら、本殿の所からさ、白い蛇が出て来たって。これはあの四人か五人の子供が見てんですよ。真っ白い蛇が出て来たって。ちょうど出棺の時にね。まあ最近で、んな神懸かりってかさ、ううん、仏さんとか何とかっていうのは、そんなとこっか聞かねぇと思うねぇ。

──白い蛇にまつわる話、他にはないんですか?──

それがとにかく一回きり。見てないやね。うん。でその蛇がどこ行っちゃったんだ(と確かめたら)、だから、その大杉(日枝神社の神木)の方へ行ったって、こら気味悪いから逃げちゃったと思うんだよ、子供だからねぇ。あのSが見たんだから(とお茶を入れに来た妻にいつのことか尋ねようとする)……。

Y あっ白い蛇だってさ、そうか、神主さん亡くなる時?

うん、だから、そん時よ。あっ時三人だか四人見てんべ?

Y うん。だから、神主さん(の所)のお婆ちゃんは、白蛇のこと、まあもっと知ってるかもしれないけどね、うん。だから、あのお宮さんの守り神じゃないかって。大杉っていうのはね、昔、それこそ、この辺で、五反田から、見えるくらいの大っきな木で、結局ほら、周りがないからそのくらいね、見えてたらしいんです。で、ある時、雷さんが落ちて、そいで、今、根元だけが残って。で、あそこにあるんだけどね。そこの所に、(守り神の白蛇が)いるんじゃないかとか、いたとか、いろいろ言われてるけど。

(中原区上丸子八幡町 農業 昭6年・Y印は妻の発言)

参考:日枝神社の大杉を買った材木屋が駄目になる

あの(日枝神社の)大杉を伐ってさぁ、材木屋があの入札で買ったんだよね。うん。買ったんだけどね使い物にならなかったっつったよ。釘がよ、五寸釘が何本も入っちゃってて。

Y ああ何、祈りじゃないけど?

うん、うん。

Y ああそう。

ほいでぇあの、そのあれでしょ、うーん材木屋さんたちまち、あの、駄目なっちゃったっていう話を、あの聞いたよね。うん。だから、今言った、その雷でさぁ、裂けちゃったんだよね。あれは何年に裂けたのかな。だから、今、明治(生まれ)の人達だと五反田から、見えたって言うんだから、だから大正か昭和の初期に裂けたんだろあれな。

Y だから、あの当時はほら荷車で、野菜とか果物どっか、あっちまで持って行ったりとか、なんかしてたでしょ、そんだから、結局ほら、今の中原街道、あの辺をずうっと、みんな行き来してたからね。そいで、荷車であの辺から見えたって話だったからね。お宮さんの境内だってね、あの裏ん所と、前っ方の、あのお菓子屋さんていうか乾物屋さんの、あの先はね、全部畑だったんですね。今あそこへだって、二、三十軒建ってるね。

(中原区上丸子八幡町 農業 昭6年・Y印は妻の発言)

『川崎の世間話』「川崎の世間話」調査団
(川崎市市民ミュージアム)より

追記