鎌取池

原文:神奈川県横浜市瀬谷区


阿久和川を遡った川上に鎌取池という池がある。明治中期ごろまでは東西二三間(約四一・八メートル)南北二町四五間(二九九・二メートル)その広さ約五反四畝十三歩もある、かなり広い池であったが、この池は阿久和と二俣川の境にあたっていた。当時は池水湛々としてみなぎり、水面青々として、まわりには樹木がうっそうと茂り、昼でもふくろうがないていたというほど淋しいところであった。ここの主(あるじ)は長さ三十メートルもあるような大蛇であった。或る日のこと、住民が草刈りに出ていると、二十メートルばかりはなれた松の木のもとに、目もさめるような美しい一人の乙女があらわれた。しかし間もなく、乙女は池の彼方へ消えていったが、あまりのことに、ポーッとしていた住民が気がついてみると手に持っていた鎌はなくなっていた。そして池のどこかで、何かが水を呑む音があたりに大きくひびいたという。(昔の瀬谷)

『戸塚郷土誌』戸塚区郷土誌編さん委員会
(戸塚区観光協会)より

追記