でいだらぼっちの足跡

神奈川県横浜市港南区


天谷の鎌倉道に沿って、飛び田がいくつもあった。昔、でいだらぼっちという巨人が忍び足でやってきた足跡だという。でいだぼっちは美人がいないかと忍び足で来たのだが、なにしろ富士山を持ち上げるほどの力持ちだったので、その足跡も田になるくらいだったのだ。

そのときに、巨人は尼将軍に追われてくそを垂れたという話もある。それでくそ山という山があり、政子の馬が驚いて川で顔を洗ったので馬洗川といい、馬洗橋がある。

『港南の歴史』
(港南の歴史発刊実行委員会)より要約

追記

野庭(のば)にあるブルーラインの車両基地の南西側に天谷(てんや)大橋があり、そのあたりの話になるそうな。そこを流れているのが馬洗川だが、馬洗橋というのは少し下流の上永谷駅近くにある。

ともあれ、この一里海側に磯子があるのであり、そちらで尻もちをついて房総に渡ったという巨人とは近しい存在かもしれない(「磯子の巨人譚」)。このあたりの巨人伝説も単独であったのではないらしいということだ。

もっとも、周辺さらに多くある話かというとそうでもなく、とんで鶴見のほうに見るのだが(「デイラボッチ」)、そちらのほうは東京に入って大森のほうの巨人伝説との間という点で興味深いだろうか。

それにしても、北条政子に追われて驚いたというのはどういうことだろうか。巨人の話とは別に政子が馬を洗っている武士に声をかけたという伝のあるところでもあり、話が混じっただけかもしれないが、少々気になる。