まさかりが淵

原文:神奈川県横浜市戸塚区


今から二百年ばかり前のこと。ひとりの木こりが、滝の上に仕事に行ったまま帰宅しないので、最早や亡くなってしまったものと思い、家人は葬式をすませた。それからちょうど三年たった三回忌の法要の日、死んだはずの木こりがひょっくり帰ってきた。驚いた家人がわけを聞くと、木こりもびっくり。「まさかりを落した滝壺をのぞくと、滝底で絶世の美人が機を織っていた。「お前は誰だ。今まさかりを落してしまったので、とってくれないか」と頼んだところ、美女は「私はここの主(あるじ)なのです。ここに私のいることを、絶対にいわなければ、とってきてあげます」といわれ、堅い約束をして、拾ってくれるのを待ち戻ってきた」というのです。すぐに戻って来たつもりが、早や三年もさまよっていたとは。この話を聞いた木こりは、まもなく死んだといわれ、今にまさかりが淵の伝説を、こけむした供養塔が語りかけている。(広報よこはま)

『戸塚郷土誌』戸塚区郷土誌編さん委員会
(戸塚区観光協会)より

追記