三宝寺の白蛇弁天

原文:神奈川県横浜市神奈川区


神奈川区青木町三宝寺には弁財天を安置して居るが、昔、住持が夜の夢に一人の童子来って告げるよう、汝弁財天を信ずること厚く、その志しや奇特なり、汝が誠心を感じて一切衆生を救わしめんが為め、五更に至らば本堂の棟上に我が姿を現ずべしと言い訖って立ち去った。住持はこれこそ弁財天の化身ならめと、庭上に立って棟上を見れば、夜はまだ明けやらぬに煌々たる光を放つものがある。何処よりか数羽の烏飛び来たって啼いて居る。棟に上って光を探すと、案の如く一疋の白蛇がいた。住持は怖々ながら袈裟に包んで本堂に入り、具に見ると常の姿とは大に相違して居る。そこで早速宝塔を営んで、これに安置することとはなった。伝え聞いた近郷遠郷の人々詣でて悉く利益を得たということで、その時の住持の書いたという『武州都築郡瑠璃光山三宝寺鎮守弁財尊天白蛇形縁起』と申すものがあるが、延宝五年丁巳五月十七日の来事とあって、以上のことを漢文で首尾を整えたもの、若し人、福徳官位智慧弁才を得んと欲せば、此の経の如く修行せよ、さあらば則ち貧を転じて福人と成し、果報を得んなり云々とあった。(市電青木橋下車)

『横浜の伝説と口碑・下』栗原清一
(横浜郷土史研究会)より

追記