三宝寺の白蛇弁天

神奈川県横浜市神奈川区


青木の三宝寺には弁財天が安置されている。昔、住持の夢に童子が現れ告げた。汝は弁財天への信心厚く奇特であるので、一切衆生を救わしめんが為、本堂の棟上に我が姿を現そう、と。住持が庭上に立って見ると、夜の明けぬうちに煌々と光るものがある。

棟に上って光を探すと、一疋の白蛇がいた。住持は怖々袈裟に包んで本堂に入り、つぶさに見ると普通の蛇ではない。そこで早速宝塔を営んで、これに安置することになった。伝え聞いた近郷遠郷の人々が詣でたが、悉く利益を得たという。

これはその住持が書いたという延宝五年の『武州都築郡瑠璃光山三宝寺鎮守弁財尊天白蛇形縁起』にあり、以上のことが漢文で首尾を整え記されている。

『横浜の伝説と口碑・下』栗原清一
(横浜郷土史研究会)より要約

追記

三宝寺は青木町からは鉄道線路を挟んで隣の台町にある。今は空中要塞かという特異なお寺として話題になるようだ。本尊は薬師である寺だが、上の弁天の話は『新編武蔵風土記稿』にもある。

「又白蛇弁天の像を安ず。此像は蛇骨にて作りしものなり。そのさま白骨にて輪をなしてあり。」といって蛇骨でできているという。『伝説と口碑』の写真は不鮮明だが、宝塔の中にとぐろのような感じが見えるだろうか。

ところで、南に下ってみなとみらいの周辺にもいろいろ弁天さんの話があり、それはやはり鎌倉・金沢というほうからの弁天さんに連なるイメージがあったのだが、神奈川区のあたりまでくるとどうだろう、という興味がある。寺名からいえば勿論、石神井の三宝寺を連想するところだ(宗派などは異なる)。

鎌倉は筆頭たる大寺の建長寺からして弁天の守護があるという土地柄だが(「乙子童子」)、そちらのほうと比べてみて「三宝寺鎮守弁財尊天白蛇」はどうか、と考えてみる必要もあるかもしれない。