三ツ池竜神

神奈川県横浜市鶴見区


明治の末ごろ、大池(二ツ池)の奥の谷に住む農民、昼間半治郎とほかの二人が三ツ池に現われた大蛇を見て驚き、その毒気のために病気になって床にふしてしまい、その後も同じようにその大蛇を見た人が、毒気に当てられ死んだともいわれている。

昭和の初め頃のこと、この話を聞き伝えた神奈川区子安町の先達が、信者十人をつれて、三ツ池の大蛇を鎮めようと来てみると、果して池の水が急に波立って大蛇が現われたと伝えている。

昭和十五年三ツ池のほとりに「旭三光乃池の碑」が建てられて、その碑面には「吉田智信三ツ池に猛蛇現れ人を悩まし田畑を荒すを聞き此地に来り一心に祈念し遂に法力をもって猛蛇を鎮め龍神と化した其の恩澤い浴せし人幾百人これを記念して碑を建つ」と刻まれている。

子安町の先達と伝えられている人はこの吉田智信氏であったのであろう。

『鶴見の史跡と伝説』(鶴見歴史の会)より

追記

西に500mほどの二つ池にも竜蛇の話がある(「二ツ池の竜」)。そちらの話を語った方も昼間某というので、上の大蛇を見たという昼間氏の子孫の方ではないか。両池は印象のつながるものだったのだろう。

こちら三ツ池は天保の飢饉に恵みの水となったなどというが、一帯は鶴見川から水を引くと満潮時に逆流する恐れのある地帯で、こういった溜池が重要な土地であったという。子安のほうとどのような関係があったものかは定かではない。