野木様と例幣使

群馬県太田市


むかし、日光の東照宮へ、毎年、京都から例幣使が奉幣にやってきた。この使いの人は、東照宮へ金の幣束を納めに行くのだという。例幣使は、道中へ泊まって行く。そうすると、街道筋のあらゆるお神は、例幣使様(金の幣束)をおがみに出るのだという。ところが、野木の明神様だけは、おがみに出なかった。そうしたら、例幣使は、
「ほかの神々はみんな出るのに、おまえだけなぜ出ない」
といったって。

そしたら、そのつぐ年には、野木様は、大きな蛇体になって、鳥居の上に、頭をまげて出て、おじぎをしていたって。

そしたら、例幣使は、
「もう出なくともいい」
っていったって(飯塚町)。

『太田市史 通史編 民俗 下巻』
(太田市)より

追記

飯塚町に野木神社とは見えない。話自体も、これは栃木県下都賀郡野木町の野木神社の話であり(「明神さまの本体」)、それがなぜか飯塚で採取された、ということだろう。

重要なのは市史の話の並びで、この話の前に「忠義な犬」の話型である石原の賀茂神社の伝説がある。そこでは鳥居の上に蛇がいるのだが、それと似た話がある、と参照するために載せられたものと思う。