ヘビダマ

群馬県伊勢崎市


長沼あたりの道を歩いていると、ヘビダマにぶつかることがある。赤蛇(ヤマカカシ)がおよそ五〇匹ぐらいかたまって、いっせいに頭だけもたげて、胴体は互いにからまり合って、高さ一尺・径二尺ぐらいの玉になって、道の真中でうごめいている。人間の足音が近づくと蛇は敏感に察知して、すっかりバラバラに散って逃げてしまう。ヘビダマはめったに見ることはできない。ヘビダマを見た人は運が開けるという。

『八斗島町の民俗 利根川流域の生活と伝承』
(伊勢崎市)より

追記

福を呼ぶ蛇玉の話。お隣玉村町の「蛇玉ぁ見た娘」なども参照されたい。桐生のほうではこういうものが柱に巻きついてできるともいう。そして、ここでは、それがめったに見られず、すぐ消えてしまう理由を、蛇が敏感に察知して、バラバラに散って逃げるからだ、と現実的に捉えている。

こういった蛇の集まりはまた容器などの「こしき」に見立てられて、「蛇こしき」などと呼ばれるが、それを見たり、手にしたりすると運が開けるというのは同じ。その蛇の群れに中に宝珠がある、とされることも多いが、上州では群れそのものを玉だといっている。