盆花とりの娘

福島県田村市


母が娘を盆花取りにいかせる。娘が川向こうにきれいな花を見つけるが取りにいけず困っていると、小さな男の子がやってきて、「夜遊びにいくからいっしょに遊んでくれるなら取ってやる」と言う。娘が承知すると、男の子は川の中に入って川向こうの花をたくさん取ってきてくれる。その夜、戸を叩く音がして、男の子が「ここのつや、ここのつや、とおが来たのに戸を開けろ」と歌いかける。娘は「戸をあけたくとも、母の抱き寝に父の手枕」と言う。母がきづいてわけを尋ねると、娘はその日のできごとを話し、舌を噛んで死ぬ。翌朝、蛇が戸口で釘にのどを引っかけて死んでいた。(船引町春山・女:『ふねひきのざっと昔』)

『日本昔話通観 第7巻』
小沢俊夫・他(同朋舎出版)より

追記

梗概であるので詳しい筋はわからない。通常の蛇聟の筋とするには、それでは捉えきれない部分が多々ある。瓜姫子の側面があるようでもある。

ここでは、結果としてではなく、はじめからもろともに男女が死に向かう話の事例として引いた。あまりあるものではないが、相州鎌倉の「扇ヶ谷の蛇ヶ谷」なども参照されたい。