宮内山大蛇
山形県南陽市
宮内の乙吉という若者が山に薪取りに行き、喉が渇いて沢に下りると、二尺ばかりの蛇がいた。石を投げても逃げようともしない。しかし、乙吉が立ち去ろうとして三間ほど行って振りかえると、蛇の首は茶釜ほどになり、目は明星のように輝き、口からは真っ赤な舌を出して乙吉を襲ってきた。
乙吉は一目散に逃げ帰ったが、病気になって数十日も治らなかった。あの小蛇は実は龍なのではないか。龍ならば普段は石鉢に入るぐらいだが、怒ると本当の龍の姿になるものだという。なお『蒲山怪実録』なる写本が伝承されている。
『南陽市史 民俗編』南陽市史編さん委員会
(南陽市)より要約
追記
このように、小蛇だと思ってちょっかいを出したら急に大きくなって(あるいは口だけ大きく裂けて)襲ってくる、というのも村里の竜蛇譚によくある話だ(「七滝の主」など)。
一体それが何を語ろうとするものなのかというのもよくわからないのだが、この宮内の話には「龍ならば普段は石鉢に入るぐらいだが、怒ると本当の龍の姿になるものだという」と、竜の性質としてそれを語っている部分があって興味深い。