おねこさま

福島県相馬郡新地町

昔、杉目は杉目村だったが、蚕様の神様を祀った大槻神社がある。村は養蚕が盛んで、お蚕さんが繭を作る時季になると、部屋中から屋根裏までお蚕さんを広げたものだが、一番困るのがネズミに喰われることだった。

そういう時は大槻神社にお参りして「おねこさま」を借りてくる。願うと、人が家に帰りつくより早く、おねこさまが家に来ていて、ネズミを退治してくれた。しかし、帰る途中に振り向いたり、寄り道したりすると、おねこさまは神社に帰ってしまうという。

ある時、おねこさまっちゃなんだべ、と不思議に思った人が、納屋に幣束を立てておくと、幣束がなくなり、ずない(大きい)青大将がとぐろを巻いたという。また別の人が、おねこさまを借りてきても姿が見えないのでは心もとない、姿を見せてくださいと拝んだところ、神棚にずない青大将がとぐろ巻いていたという。

それで、おねこさまとは青大将のことだろうという人もいる。実際どうだかはわからないが、屋敷にいる青大将は大事にしたものだそうな。

新地語ってみっ会『新地の昔話』
(新日本文芸協会)より要約

大槻神社は現存し、杉目(すぎのめ)の字も大槻に鎮座される。もと妙見であったというが、続くうちに稲荷神社となったそうな。現在も御祭神は稲蒼魂命である。そこに、養蚕守護で鼠退治の「ねこ」と「へび」の重なりが見えているわけだ。