御拝殿の蛇

福島県耶麻郡磐梯町

磐梯山の翁島登山口の中腹に、御拝殿があった。女人禁制のころは、女の人や年寄りなどは、そこから磐梯山頂上の明神を遥拝した。田の虫よけに立てる札なども、そこで配られたものだ。

昔、翁島に五十嵐という篭細工をする人がいた。足が少し不自由なので、根曲竹を切りに山に入り、御拝殿で竹を裂いて、身竹を捨てて皮竹だけを翌日持ち帰ることにしようと、泊まっていた。

ある夜、御拝殿で一仕事して寝ようとするも寝付けず、天井の梁に光るものがある。目を凝らすと、それは梁の上から大蛇が見下ろしているのであった。驚いて不自由な足を引きずり山を逃げ下ったが、このとき御拝殿が全焼したという。再建はされず、今は跡形もない。

橋本武『猪苗代湖畔の民話』
(猪苗代湖南民俗研究所)より要約