大磐梯と小磐梯の間に「龍が馬場」というところがある。昔、祢次村の鉄砲打ちが行ったとき、犬が狂ったように吠え出した。薄暗い谷に倒木があったが、その木が動き出した。大蛇であったのだ。大蛇は鉄砲打ちをひと呑みにしようとし、鉄砲打ちは一目散に逃げた。
ところが、足を取られて転倒し、もはやこれまでと、犬を投げつけて大蛇が犬を吞む間に逃げた。命からがら家に帰ると、吞まれたと思った犬が先に帰っていた。鉄砲打ちはそれから七日七晩寝込んだという。
そして、ようやく起き上がってみると、犬はおらず、いくら呼んでも見当たらなかった。鉄砲打ちは己の浅ましさを悔い、泣いて詫びたが、犬は帰ってこなかった。