金寧の蛇窟・一

韓国・済州特別自治道済州市

蛇窟には大蛇がいて、祭りをしないと大嵐がきて穀物が作れなくなった。それで毎年処女を供物として祭りをしていた。ところが、永川の牧使がこれを知り、大蛇を討ってしまった。討ってから済州市の三門に入ると、背筋がぞくぞくし、蛇の血が背中にべったりついていたという。

この牧使が島から帰ろうとすると、台風が来ていけなくなってしまう。牧使は島に来て、五百の寺と五百の神堂を壊したが、また修理もしたので、古塚の鬼神数万が夢に出て、お礼に閻魔大王に風を吹かせてもらうので、日が明けてから船で帰るように、と助言してくれた。

こうして牧使は故郷に帰ることができたが、死んでお墓が造られると、そこに蛇が現れたという話もある。大蛇がお墓で敵討ちをしようと、現れたのだという。

日韓比較文学研究会『翻訳 韓国口碑文学大系1』
(金壽堂出版)より要約

こちら金寧のほうでは、牧使が破壊だけでなくなぜか古塚を修繕したといい、それで塚の鬼神たちが、祟る蛇から牧使を逃がすのを手伝っている。生贄の風習を亡くした牧使を英雄とする面もあるらしい。

なお、(9-1)191とあるが、現在ネット上では地域別のディレクトリからはたどれないようだ。検索結果には出てくる。この牧使が李衡祥であることはそちら原文の中にもある。

ちなみに蛇窟とは「뱀(蛇)굴(窟)」。また、よくわからないのだが、「대맹(大蟒)이」という記述が最後に見える。「맹이」とは鞍とか槌とか出るが、蛇をそう見るのだろうか。