浮島沼の沼のばんばあ

静岡県富士市

浮島沼が広い大沼だった頃、夕方から夜になるとうめき声のような不気味な音が聞こえたという。昔、村に子連れのおばあさんがやってきて、村人からもらい物をして暮らしていた。村人はかわいい子に同情して物を与えていたが、度重なるうちに疎み嫌うようになってしまった。

そこで、おばあさんは子を連れて村はずれの沼のほとりに住むようになった。ところが、長雨が続いたある六月、大水で家が流されてしまった。子もおばあさんも水に流され、おばあさんは子の安否を気遣い「ボー、ボー」と呼び続けた。そして、二人とも水に沈み死んでしまった。

それから、沼のほうから「ボー、ボー」という声が聞こえるようになったといい、子どもが泣きやまない時などは、「沼のばんばあが来るぞ」とおどし文句として使ったという。土地の古老は食用蛙の鳴き声じゃないかと思う、ともいう。

富士市総務部広報広聴課
『ふるさとの昔話』より要約