穴の原の大蛇退治と舞台

静岡県伊東市

大室山の穴の原の洞穴は富士まで続くともいわれる。この穴の奥には大蛇が棲んでおり、村人を苦しめたが、将軍頼家が狩りに来た時、村人たちは大蛇を退治してくれるよう願い出た。頼家は快く聞き入れ、和田平太という強い家来に大蛇退治を命じた。

和田平太は松明をかざして穴の奥へ進み、何時間も歩いて灯も消えてしまった。その真っ暗な穴の中、大蛇が飛び出し平太をひと呑みにしようとしたが、平太は一声の気合とともに、大蛇を斬り殺した。

村人たちは頼家の一行を迎えて、何のお礼もできないので、踊りなど披露して見せたという。その場所は小高い百五十坪の広さの「舞台」という地籍で、今も残っている。その後、村人たちは幸せに暮らしたということである。(『池の歴史』)

伊東市史編さん委員会
『伊東の今・昔 伊東市史研究 第5号』
(伊東市教育委員会)より要約

山神社の鎮座する小字は「台」といい、より小さな小地名であろう「舞台」や「四方くずれ」という名を含むような名だ。この山神社には参拝したことがあるが、当時はこういった話があるとは知らなかった。

また、穴の原の洞穴に関してだが、今は土砂が流れ込んでもう奥はないそうだが、昔は底へ降りるときれいな水がたまっていて、夏の最中など手軽に水を飲むことができる貴重な場所だった、とも地元ではいう。人穴のようにずっと恐ろしいところと思われてきたわけでもないようだ。