うばヶ池

静岡県浜松市中区

板屋町近くに昔大名が住んでいて、そこには大きな池があった。大名には一人娘があって、乳母がついていたが、ある時ふとした病でその娘が亡くなってしまった。大名は乳母が悪いと大変に責め、乳母は申し訳がないと池に身を投じて亡くなってしまった。

すると、これがためか娘が生き返った。そして、乳母が自分のために死んだことを聞いて気の毒に思い、池に行って、自分は生きているから出てきておくれ、といった。乳母は、はい、といって出てきたということである。その池はもう残っていない。

静岡県女子師範学校郷土研究会
『静岡県伝説昔話集』(谷島屋書店・昭9)より要約

静岡にはこのような子を水で亡くした乳母・姥が入水した「沼のばあさん」の池沼があちらこちらにあり、これもそのひとつであると思われる。最後に乳母が出てきた、というのは生き返ったのではなく、その霊が顕れたという話のようだ。