剣磨り石

長野県上伊那郡飯島町

与田切川の本流に面して、南向きの巨大な岩石の中央に直径二五cm、深さ六〇cmほどの穴がある。前面は猿ヶ淵という恐ろしいほどの深い淵になっている。昔、ある落人が世を忍び、山ごもりをして米を舂いたとも、また竜が昇天する際に、その尾で磨って穴を開けたものとも伝えられている。内面は滑らかで凹凸がなく、磨き上げたようである。

昔は、ここを水が流れていたが、今は、川の中心が南に移動して干上がってしまったので、普段は木の葉に埋まって、人目に触れることはまれである。(与田切川、字オンボロ:大正四年『飯島村名勝史蹟及天然記念物調査書』)

『飯島町誌 下巻』より