お染と与七郎 長野県南佐久郡佐久穂町 昔、臼田近くの名主の息子与七郎は、作男の娘お染と恋仲であった。ところが、これを知った名主はお染親子を追放し、別に与七郎の縁談を進めた。 丁度その頃干魃があり、双子竜神に人身御供を捧げることになったが、名乗り出るものがなかった。その時、与七郎が愛するお染の名を叫びながら雄池に身を投じたのだという。 また、それを知ったお染が、後を追って雌池のほうに身を投げた。以来、双子池は年に一度増水して、二つの池がつながるのだという。 『八千穂村誌 第三巻 民俗編』より要約 同稿は「双子池の伝説」という題のもとにいくつかの伝説がまとめられている。内、 お染と与七郎の話を抜き出して要約した。 蓼科山中、双子山の峠の下にある双子池の伝説としては、ヌシになると宣言していた大尽の息子が池の大蛇となったという代表的な話(「双子池」)がまずあるが、このような全く異なる話もある。 村誌の同稿は「双子池の伝説」として、池にまつわる各話をまとめたもので、中から引いた筋に題を付けて抜き出した。双子池は雌雄の池であり、年に一度つながるのだ、ということを語るにあたってはこちらが代表的な話となるだろう。 もっとも、より大きな竜蛇神の行き来の話を枠組みとしたものとして、諏訪湖と松原湖の雌雄の竜蛇が出会うのがここなのだという話もある(「双子池と雌雄の竜」)。こちらも参照されたい。 ツイート