龍宮淵 長野県佐久市 佐久市相浜の金龍寺崖下に、龍宮淵という所がある。村人が人寄せの事がある度に、膳椀何人前借用したいと書いて淵に入れ、明朝行って見るとその数だけの膳や椀が浮き出ている。使ってから礼を述べて返すと淵に沈んでいく。 村人は永い間便利に使っていたが、ある年、よくない人があって椀をいためてこれを捨て、詫を言わずにそのまま返した。それから後は願っても出てこなくなった。(下県、農、木内実62) 『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』(佐久教育会)より 今も金龍寺はあり、その東側の千曲川の大きな屈曲がこの淵となる。今は護岸工事もなされ、往時の雰囲気ではないだろうが、周辺の井戸や滝淵がこことつながるといわれ(「起因の井戸」など)、知られた伝説の淵だった。 話そのものは、これ以上ないというくらい枝葉を削った椀貸し伝説となっていて、このくらい簡単に話される類話が信州には枚挙にいとまなく存在する。 ツイート