甲賀三郎・前山

長野県佐久市

立科山に大きな穴があり、底も知れなかった。昔、甲賀三郎と兄がその穴に来、兄は三郎に穴の底を探らせた。ところが、兄は三郎を下した綱を切って置き去りにしてしまった。兄は三郎の妻がほしかったのである。三郎は腰に餅をつけていたので、それを食べながらどんどん歩き、明るい所へ出た。

外へ出てみると、そこは浅間山だった。三郎が山を下り小沼村に来ると、子供が「龍が来た」と泣いて逃げた。そこで真楽寺の大池に映してみると、三郎は龍になっていた。

驚いた三郎は黒雲を呼んで双子池へ行った。着いて来たほうを見ると、尾が前山村に垂れていた。それでそこを尾垂という。三郎は真楽寺の大池が小さかったので双子池へ来たが、そこも小さかったので諏訪湖へ行ったともいう。

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』
(佐久教育会)より要約