塩名田の北数町の濁川近くに「法螺のけ石」という石がある。二~三千貫あろうかという大きな龍磨りの石(U形のくぼみ石)で、ほら貝のような音をして鳴ったという。いまその地名を法螺口といっている。
法螺口の小地名もわからず、現状は全く不明。信州には龍磨り石とか剣ずり石などといって、竜蛇がその尾の剣を磨いたのでへこんでいるのだといわれる石がままある。各地で言う硯石のようなものだが、この地域ではそう説明していたのだ。
多くそれはその凹みにはいつも水がたまっていて、それをかき回すと雨が降るなどいい、馬蹄石などとも同じ部類になるものだが、そこに法螺貝の話もついてくるという点がおもしろい。
地中の法螺貝の鳴動はまた嵐を呼ぶ怪だが(「柳沢の法螺貝」など)、それはまた剣ずり石と近しいイメージもあるものだということを示す事例といえる。