大水と蛇 長野県上田市 雨が少ししか降らなかったが、荒井と横尾との間の川はとても大水が出て、村の人は雨も降らねにどうしてこんなに大水が出ただらずと言っていた。すると上の方から大きな丸太が流れて来た。慾深の爺さんは、その棒を拾わずと思って鳶口をその棒にぶっ込んだ。するとその棒だと思ったのは大蛇であって遂に引き込まれてしまった。それから村の人は大水の出る時はきっと山から大蛇が出て来るから川のそばへ行ってはいけぬと言っている。(横尾 青木武重) 箱山貴太郎『上田市付近の伝承』(上田小県資料刊行会)より 嵐のときにはうかつに水の様子を見に行ってはいけない、というのは昔からいう。今も昔も起こりがちな事故だったのだろう。これは神川の流れる四日市あたりの話かと思うが、大蛇が流れて移動するのが大水なのだ(「大蛇と大水」)。 ツイート