虚空蔵さんと八ツ目うなぎ 埼玉県志木市 三貫田の池(虚空蔵池)の虚空蔵さんは、眼病を治してくれる仏さまだといわれている。この石仏が建立されたのは、元禄12年(1699)のことという。その時、近所の目を病んだ女の子が過って池に落ち、死んでしまったという。それで両親がせめてあの世で目が治るように、と虚空蔵さんを建て供養をしたそうな。 その後、目を患う人が話を聞いてお参りに来るようになった。そして、眼病が治ると、お礼に生きたうなぎを池に放ったのだという。不思議にも、池に放ったうなぎはみんな八つ目うなぎに変わってしまったという話だ。 志木市webサイト「しきの伝説」より要約 Web 中宗岡の話。今はもう池はないようだが、道端に虚空蔵さんの石像はまだ祀られている(「しきの伝説」に写真もある)。虚空蔵さんが鰻を使いとし、拝めば目を治すし、その鰻を捕るなり食うなりすると罰があたって目が潰れる、などという。 この三貫田の池の話もそのひとつではあるが、池に放った鰻がヤツメウナギになってしまう、というのは特異な話だ。確かに、妊婦さんがヤツメウナギを食べると目の良い子が生まれる(愛知県長久手市)、などと俗信があり、目を良くするイメージのあるヤツメウナギなのだろうが、こう直截にいう例は見ない。 そして、その大和田の頭無(かしらなし・地名)という所は、所沢の滝之城の首を刎ねられた大蛇が逃げてきた死んだところともいうのだ(「滝之城の大蛇」)。滝之城の方で、城が大蛇に守られていたとも、城兵が大蛇を討伐したともいうのは、この長勝の話が混同しているのじゃないか、とも思える。 ただし、その神池(菩薩だが)に放った鰻が、ただの鰻から神使いの鰻へ変化する、という話はままある。関東では野州が星宮・虚空蔵・鰻信仰のメッカだったが、中でも焦点のひとつとなる太平山にも、放った鰻が白くなる、という池があったという(「鰻お小屋」)。 ツイート