片目の女体様 埼玉県草加市 中根町の鎮守様は、女体様で、社殿正面から見ると、一番奥の厨子の中に、彩色された女性のお姿で、宝冠を被った座像が安置されている。地元の年寄はいう。この女体様は、昔は両目が開いていたのだが、ある時、麻の葉で片目を突き、潰してしまったのだと。 それで現在のお姿は片目が潰れている。このことがあってから、村では麻の葉を嫌う。麻を作るのは勿論せず、赤子にも麻の葉模様の着物は着せないのだそうな。 草加史談会『草加の伝承と昔ばなし』より要約 この中根の女体社は新編風土記にも見えるが、記録の上では旭氷川神社に合祀されてしまっており、詳細は不明。今も綾瀬川の東側に小さなお社はあるが。話の女神像が現存するのかは不明(同資料に写真がある)。 御祭神が伊弉冉尊となっている点がやや難だが、一応土地柄からいって見沼の氷川女體神社の勧請と見、そちらの片目の魚の話から参照したい(「片目の神魚」)。 また、その片目になった理由が「麻の葉」であることも覚えておいてよいだろう。武蔵では秋川の雨武主神社の神がまたそうであった(「麻で目をついた神様」)。「アラハバキ圏内」と考えるなら、双方入る。 ツイート