麻で目をついた神様 東京都あきる野市 雨間の雨武主神社の神様は荒事が嫌いで、相撲を奉納したら大雨を降らせるくらいだった。その神様がある日秋川の北の畑へ出かけた折、作られていた麻の根に躓いて、その拍子に麻の葉で片目を傷つけてしまった。 これを聞いた人々は、神様の片目を怪我させた麻を作るのは恐れ多いことだと思い、それ以来麻を作らなくなったという。 唐澤健一『秋川昔物語 秋川市ところどころ』(秋川市教育委員会)より要約 雨武主神社の神さまはまた蛇であるともいう(「大蛇の通った跡」)。上の話では特に蛇だとはいっていないが(今の御祭神は天御中主神)、両話あわせれば「片目の蛇の神」であることになり、近郷二宮小河神社の神さまの話とよく似てくる。 また、神が目を突いたことからその植物を禁忌とする話は枚挙にいとまなくあるが、麻というのは珍しい、と思っていた(「麻の葉に目を失いし神」)。確かにあまり見ない話ではあるのだが、なくもない、ということになる。柳田国男は『日本の伝説』で近江の笠縫天神がそうだと紹介していた。 さらに、この地にはまた別に巨人の伝説も語られている。これは雨武主神社と直接関係するものではないようだが、大蛇と巨人がほぼ同じ所であれこれやっていた、という場所のひとつにもなるだろう(「デイダラボッチの下駄糞」)。 ツイート