赤山の池に現れた竜神

埼玉県川口市

赤山城跡の西北部にわずかに水を湛えたところがある。伊奈氏が勢力を誇っていた頃の後苑の池であったという。昔、この池に伊奈氏が舟を浮かべていると山蛇が現れて「われは見沼の竜神である。汝が家のために棲む所を失った。この恨みは忘れない。必ずや汝の家に災いをなすであろう」と怒りの言葉を残して水底に消えた。村人は永くこの水底に伊奈氏がその時舟遊びをしていた朱塗りの舟が沈んでいると信じてきた。(『川口市史』史跡名勝天然記念物調査)

『日本伝説大系5』より

題は独自につけた。この池は今はもう見えず、反対側にある赤山城の守護神とされた日枝神社の山王池の方に、山王池の主の蛇が埋められそうになって怒ったというほぼ同じ筋の話がある(あるいは「北西」が誤りで伝説も山王池のことか)。山王池の方は伊奈氏が雨乞いの神事を執り行う場所であったという。