明治三年の夏のある日、晴天であったが急に水沢山に黒雲が湧きたち大雨となった。滝沢川が大洪水となり、川向うで小物播きをしていた半田の百姓は、二日も家に帰れなかった。この時水沢に大きな岩ぬけがあった。これはこの岩に住む法螺貝が大水にのって海に出たのだと伝えられている。(半田)
貝水は「けいみず」と読む。法螺貝が地中で鳴動し荒天を呼び、これが抜ける(土砂崩れなど)ことを「法螺抜け」などといい、その伝説上の振る舞いは竜蛇の「蛇抜け」に近しい(「柳沢の法螺貝」など)。
この半田の話はまったくのところその一例となるだろう。ここから利根川を少し遡ると吾妻川が合流するが、その吾妻川を少し遡った川島地域には、「ジアナ」の小地名がある。それは蛇が抜けた穴の意だが、法螺貝がうなって先に出、そのあと蛇が抜けたという。