うなぎの背に乗った虚空蔵様

栃木県鹿沼市

昔、粕尾の布施谷で祀っていた虚空蔵様がある大洪水で流されてしまった。その虚空蔵様はその時うなぎの背に乗って下流の松崎まで流れてきて村人に拾い上げられた。そしていったんこの仏様は布施谷の村に返されたが再び洪水で流されて来て松崎に流れ着いた。村の人たちは、この虚空蔵様がこの松崎で祀ってもらいたいのだろうということで、布施谷の人々と話し合い、松崎の鎮守天満宮に合祀したという。これが今の「星宮天満宮」神社である。

『粟野町誌 粟野の民俗』より

下粕尾に今も天満星宮神社(神社庁)と見える。村の鎮守さんといった風情で、特に伝説の地という構えもなく、大杉が少し注目されるくらいのようだ。星宮が天満宮と合祀されたのは結果だろうが、佐野では星宮と天満宮が大鎮守として並んでいる。あるいは両毛的な感覚というのはあるかもしれない。

布施谷というのは思川を遡って二、三キロというところで、そう遠い距離を流れたという話ではない。言ってみれば、疫病などの際に天王さんを下の村に流した、というような距離感ではある。そういった構成が虚空蔵信仰にもあり得るのかどうかわからないが。