昔、釜井に長兵衛という者がいて、近くの立霧の池で大ウナギを見つけた。あまりに大き過ぎるので、家から弓矢を持ってきて、ウナギの目にねらいを定めて矢を放った。矢は見事にウナギの片目に命中し、ぐったりと弱まった。長兵衛はこれをつかまえ、家に持ち帰って、いろりの火で焼いたが、脂肪が多く、七日七夜に及んでも皮すら焼けない。長兵衛は「これはただのウナギではない」と驚き、「たたりがあるかもわからない」と心配し、ウナギをもとの立霧の池に放すことにした。水中に放すと、今まで死んだようになっていたウナギは生き返り、元気よく水中に泳いでいった。長兵衛はたたりを恐れ、池の近くにウナギの宮を建ててまつった。これ以後、この池にすむウナギはすべて片目になったという。(稲敷郡東村釜井・『常陸の伝説』)