朝寝坊山

茨城県水戸市

昔、ダイダラボウという山のような大男がいた。大きかったが気は優しかったので、みなには好かれていた。住んでいた所は大足といわれる。そのダイダラボウが、ある日村人の愚痴を耳にした。

村人たちは田畑の南にある朝房山を見上げ、あの山がなければ、日がたっぷり当たって、もっと作物が穫れるのに、朝寝坊にもならないのに、と困っていた。ダイダラボウはこれを聞いて、村の人たちのために、山を移してやろうと決心した。

あくる日、ダイダラボウは朝房山を動かし始め、渾身の力で山を持ち上げると、人のいない北のほうへ移してしまった。こうして、村では朝寝坊をする人もなくなり、作物もたくさん穫れるようになり、皆はダイダラボウのおかげだと感謝した。

朝日新聞茨城版『いばらきの昔ばなし』より要約

朝房山は大足の北にあるが、つまり、これが昔は南側にあった、という話。巨人と山の背比べの話は各所にあるが、村人のために山を移したというのは、巨人伝説と付き合いの長い土地ゆえの親しさだろうか。

その二者がどのように関係しているのか、あるいはまったく別の話なのか、近く牛伏の古墳群と山の移動の話は関係あるのか、その古墳群を造った人々は晡時臥山の蛇を祀った人々ではないのか、と話は堂々巡りする。無論、これも風土記のころより語られる常陸の巨人伝説のいろいろと並べてみる必要もあるだろう。