丸山大蛇と藤の花

福島県大沼郡会津美里町

大八郷の丸山は、今は北側が削り取られているが、昔は饅頭のような丸い山だった。そこには丸山オサンとかほっこめ小次郎といった名のあるキツネもいたという。山の東に道があって、広い雑木林が広がっていたが、そこには電信柱程の太い大蛇が住んでいた。

悪いことをするわけではないのだが、よく雑木林から首を出して丸山を眺めていたので、道行く人は怖がった。そして、噂が会津黒川城に届き、殿様が参勤交代でその道を通るまでに、大蛇を始末するように、との御達しがあった。

村人は穏やかな大蛇を殺すこともできず、お殿様が通る時には姿を見せるなよ、と言い含めた。大蛇はうん、うんと頷くようにして去り、それから姿を見せなくなったという。皆は可哀そうなことをしたと思い、大蛇がいつも寝ていた山裾に蛇の宮を建てた。

さて、お殿様の立派な行列が来た時、お殿様が急に駕籠を止めさせた。村人が何事かと思うと、なんと丸山の麓から天辺まで、太い藤の枝がぐるぐると取り巻き、美しい紫の花を咲かせていたのだった。お殿様は大層喜び、お褒めの言葉を残して江戸に向かった。村の人たちは、藤は大蛇の化身であろうと哀れんだ。

みさと民話の会『会津 みさとのむかし話』
(歴史春秋出版)より要約

丸山の北東側には蛇ノ宮の字があり、小さな石祠だが、今も蛇の宮神社がある。いずれ字名になるほどであったお宮ゆえ、往昔はよく知られたものだったのかもしれない(あるいは丸山自体が蛇と見立てられたものか)。