昔、ケチなやもめ男がいたが、ある時旅のあかぬけた娘が通りかかり、男の家に一晩厄介になった。娘はその後も出て行かず、かいがいしく家のことなどするので、一緒に暮らすことになった。
女房となった娘は機織りがうまく、近隣の話題になって男の暮らしも良くなった。しかし、不審なことがあり、米びつの米の減り具合がおかしいのだった。そこで、男が仕事に行くふりをして家を覗き、大蛇がとぐろを巻いておにぎりをペロペロ呑んでいる有様を見たのだった。
これにゾッとした男は寝込んでしまったが、正体を知られたとさとった女房は、悔しい、生かしておくものか、と大蛇の形相となり男に迫った。男はほうほうのていで逃げ、あわやというところでよもぎとしょうぶを夢中でつかんで大蛇に投げつけた。蛇はぐったりとして姿を消し、それが五月五日であったので、以後屋根ひさしによもぎとしょうぶをさして魔除けとするようになった。