竜の笛

福島県いわき市

内の草に蛇岸淵があり、龍が住んでいて時々泳いでいた。ある日、内の草の若者が通りかかったところ、何か声が聞こえるので、耳を澄ませてみた。すると、それは川の底から聞こえる龍の歌声であった。

若者は龍の声を忘れないようにと急いで帰り、竹笛を作り始めた。吹いては削り、削っては吹き、三日三晩かかって、耳にした龍の歌声そっくりの音の笛が出来上がったそうな。笛は近くの神社の獅子舞に吹かれるようになり、皆はその美しい音色に大変驚いたという。笛にあわせる歌は……

 あいらけんけん
  むまたらやらん
 はった はった
 天ぢくの
  ごんが川原の水たえて
   むすびてかかる
    あびら えんけん

いわき地方史研究会『いわきの伝説と民話』より要約