協和町蓬田。判官が領内を巡見していたとき、池のほとりで美しい娘に出会った。城に戻ってもその娘が忘れられず、夜再び池のほとりへ行き横笛を吹いた。すると娘が現われ九夜通って笛を吹くよう頼んだ。
九夜目、判官が吹く笛の音とともに、池の中から大きなうわばみが姿を見せ、判官の方をしばらく見ていたが、やがて水の中に沈んでいった。それ以来娘は現われなかった。判官はこの娘をしのびその池に「うわばみ池」と名づけた。(『広報きょうわ』)
話が載っているのは神奈川県藤沢市の市史研究シリーズで、小栗判官伝説の本貫ゆえに、いろいろな土地の話も収集されている。そして、この話は小栗が城主であった小栗城のあった筑西市は旧協和町小栗付近の話となる。
説教節の小栗判官は、京鞍馬の大蛇の美女と契って、そのあげく竜女同士の争いの因とされて常陸に流される。その影響もあってか、照手姫以前の竜女との関係が常陸でも語られるのだろう。
さらに同地では、小栗判官に命を助けられた大蛇が化生したのが鬼鹿毛である、というような話もある(「大蛇であった鬼鹿毛」)。
うわばみ池の大蛇と鬼鹿毛となる大蛇が同じか否か不明だが、北へ行って野州茂木では、小栗判官との間に子をなした蛇が鬼栗毛(鬼鹿毛)に転生したという話がある(「小栗判官」)。