大青大将の目

福島県郡山市

大正の初めころ。舘の止宮で土方が畠を開墾していると山兎が跳び出したので追うと、藪の中で山兎が罠にかかった。しめた、と土方は思ったが、次の瞬間驚いて後ずさった。見ると、見たこともない大青大将が、妖しい金色の目を光らせ、兎の後ろ足をくわえていたのだった。

土方は横取りされた悔しさから、棒切れで蛇に一撃を加えた。しかし、蛇はかまわず兎を呑み始めるので、力任せに殴り続けた。蛇はしぶとかったが、最後には血みどろになり、首がもげて胴体がのたうち回った。さすがに気分が悪くなった土方は畠に戻ったが、暑気あたりのようになり家に帰った。

激しくのどが渇くので、水がめに首を突っ込んで水を飲もうとしたところ、ドンブリから何かが落ち、水がめを覗いた土方はのけぞって驚いた。そこには蛇の首が、大青大将の金色の目があって土方を睨み付けていたのだった。

それから土方は酒を浴びるように飲むようになり、酒乱となって牢に入れられるなどを繰り返したのち、離村して果てた。この青大将は厩の柵棒ほどもあったというが、止宮の主で、向かいの小荒井にも主の青大将がいたという。

橋本武『猪苗代湖畔の民話』
(猪苗代湖南民俗研究所)より要約

止宮(やんぐう)・小荒井ともに湖南町舘内の小字に見えるが、正確な場所は不明。止宮が現存の神社と関係するのかも不明。そこに、こういった大青大将の話がある。

これが止宮というお宮のヌシであったのか、ただその名の土地のヌシであったのかで大分話の雰囲気も変わってくると思うのだが、そこがわからないというのは面白くない。そのあたりはいずれ。