たこと盲人

青森県五所川原市

盲目の三味線弾きの男が峠に向かった。麓の人は山中泊まると命が危ない、と止めたが、男は登り、一軒の空き家に泊まった。さびしくなったので、三味線を弾いて大声で歌っていたが、歌い終わると女の声が「もうひとつ歌ってくれ」というのだった。

言われてまた歌うと、女の声は、自分はこの山のたこだ、村人に話すと命はない、という。翌朝山を下りた男は、酒屋で休んだが、昨夜の話をして死んでしまった。するとそこに女が現れ、自分はたこだ、良い声をしていたので生かしておいたが、約束を守らないので殺した、といった。

そして、酒屋たちにも他言しないよういい、話せば三味線弾きのようになり、村は沼になる、といった。しかし、酒屋たちはこっそり先手を打って峠の周りを鉄棒で囲んだので、たこは山に帰れずに死に、蛇身となっていた。このたこと盲目の三味線弾きを一緒に祭ったのが、おしら様という。

内田邦彦『津軽口碑集』
(郷土研究社・昭4)より要約

おしら様の謂れについては、馬娘婚姻譚以外にもいろいろにあるが、中でも極めて注目すべき話が、この嘉瀬の話といえる(旧北津軽郡金木町嘉瀬の話)。