タンタン竹女

門部:日本の竜蛇:九州・沖縄:2012.01.16

場所:長崎県長崎市
収録されているシリーズ:
『日本伝説大系13』(みずうみ書房):「タンタン竹女」
『日本の伝説28 長崎の伝説』(角川書店):「竹女の伝説」
タグ:竜蛇と竹/竜蛇と笛/佐用姫伝説


伝説の場所
ロード:Googleマップ

竜蛇と植物の関係で一向に進展を見ない問題に「竹」がある。葬儀で竹が竜蛇を表す例がある、竜女と鏡像関係にある天人女房を追う夫は竹を登る、七夕の竹も同様であり、かぐや姫もいずれ繋がる。

そうではあるのだが今ひとつ「これは!」という例がないのだ。そんな中で「これ……は?」くらいではあるのがこの竹女の伝説である。

タンタン竹女:
春徳寺の後山、城の古址に竜頭岩という巨石がある。昔、この近くに竹という笛が上手な娘がいた。ある時一人の美少年が現われて、二人は好きあう仲となる。お竹は、その美少年と末は夫婦と心に固くきめたが、美少年には、外に言い交わした仲の娘がいるという。お竹は落胆した。
ある日、山陰から美しい笛の音が流れてきた。お竹は誘われて山奥へふみ入り、行き方知れずとなった。ところが数日後、竜頭岩の上にうつろな目で立つお竹が見つかり、家につれ戻された。お竹は原因不明の病の床につき、医者にも匙を投げられた。
家人はこの上は加持祈祷をと、修験者を頼んだ。修験者はお竹には大蛇の精が憑いていると断じ、これを祓った。するとお竹は生気を取り戻し、一命をとりとめた。その後、お竹は笛を手にすることはなかったと言う。
そして、またある日のこと。件の修験者が竜頭岩のほとりを歩いていると一人の武士がぼんやりと見えた。これが大蛇の化身かと見破った修験者は一喝し、これにより武士は怪蛇の本性を現し、消失した。これ以降竜頭岩を叩くと「タンタンタケジョ」と音を発するようになったと言う。

みずうみ書房『日本伝説大系13』より要約

冗長なようだが、前段一人目の美少年との破談は必ず入る。その人の男子との破談・悲恋の後に蛇性にかどわかされるという構成は『肥前国風土記』に見る弟日姫子と狭手彦の話(松浦佐用姫伝説)と同じであり、無関係ではあるまい。

類話では笛に誘われたお竹の行く先に一人目の美少年と瓜二つの男がいたという、明らかに弟日姫子伝説を意識した表現もある。つまり、大雑把にいえば全国の入水する姫の典型として知られる佐用(小夜)姫が「竹」の名を持っている類話だと見えるのだ。これは興味深い話である。

竜頭岩は今「龍頭巌」と書かれるようだ。江戸初期の長崎代官・末次茂房が父政直の石郭を造ろうとして、龍頭巌の一部を切り出そうとしたところ、岩の間から鮮血が吹き出したと伝わり、一帯の聖地・磐座として信仰されてきた場所だったのだろう。

竜頭岩(龍頭巌)
竜頭岩(龍頭巌)
リファレンス:ぼんでんの徒然日記画像使用

これらがどのような意味を語るのかにわかには何ともいえないが、佐用姫伝説とあわせて多くのヒントを提示してくれていると思う。肥前の竜蛇譚を見る際には見落としてはならない一話だろう。

memo

タンタン竹女 2012.01.16

九州・沖縄地方:

関連伝承:

弟日姫子と狭手彦
弟日姫子と狭手彦
佐賀県唐津市
『肥前国風土記』に見る佐用姫伝説の源流。
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