鹿玉

静岡県藤枝市滝沢

滝沢の栗原政蔵方に鶏卵大の薄緑りの鹿玉がある。角質で地膚に条理があり、日中これを見ると光線の具合で紅黄色に見えることもある。

この玉は明治初年に政蔵の父が五ツ又の角を持つた大鹿を獲えた時、腹を裂いたら出て来たそうである。

鹿が玉遊びをすると云う話しがある。五ツ又の鹿は口中にこの様な玉をくわえていることがあるが、それを誤つて呑みこんだものかも知れない。

松尾書店『史話と伝説 中部篇』より原文


同じく滝沢村には、一方で蛇玉を蔵していた家があった、という伝もあり、並び見てみると興味深い。

滝沢の蛇玉
静岡県藤枝市滝沢:滝沢村のある家には、数百匹の蛇の斗った跡にあったという蛇玉があった。

同じ村で噂になった両者であろうことから、やはりつながりがあるものという認識があったのだろう。すなわち、鹿と竜蛇の関係、という問題に大いに関係してくる事例なのだ。

無論、明治のこととあって、五ツ又の角の鹿は多岐(多頭の)大鹿というわけではないが、同系で玉を持つような竜のような鹿、というニュアンスはあるのじゃないか。

甲賀三郎の妖怪退治
京都府京都市右京区内:旧京北町:都までをも荒す十六本角の大鹿を甲賀(香賀)三郎が討伐する。