蛇が橋

静岡県田方郡函南町


頼朝が毎日三島大社にお参りに来た。或日の帰り、非常に雨が降り、今の間宮の所を流れて居る狩野川の一支流(名もない川である)は雨のために多量の水が出て、どうしても渡ることが出来なかった。すると蛇が現れて、橋になって渡してくれた。これを蛇が橋という。

『静岡県伝説昔話集』
静岡県女子師範学校郷土研究会
(静岡谷島屋書店)より

追記

現在の函南町間宮の南端にあたり、今も「新蛇ヶ橋(じゃがはし)」がある。来光川が狩野川に流れ入る近くになるが、なるほど韮山へ頼朝が帰るには渡らないわけにはいかないところだろう。ここは下田街道でもある。

このような話は、村里の人には境として、土地を違える人の往来を拒む橋が、それを越境する立場の人(殿様に代表される)を通す話と見える。三島の神の使いという見方もできなくはないが、神使いと離れてもこういう話はある(「大蛇の橋」など)。