姥懐ガ池

長野県大町市


ある家の嫁が姑から一日のうちに機を織り上げることを命ぜられ、沈もうとする太陽に向かって、織り終わるまで入らぬよう願うと、五六間上に戻った。嫁は機を織り終わると、この池に飛び込んで、大蛇になった。この池に行って頼むと膳椀を借りられたが、椀の蓋を一つ失ったまま返してから貸さなくなったという。その後、池の主は上水内郡津和村の荻野の池へ移ったので、姥懐ガ池は荒れてしまった。

『日本伝説名彙』所引「北安曇郡郷土誌稿」第一輯)

『日本伝説大系 第七巻』(みずうみ書房)より

追記

大系上の文が梗概のようなので、そのまま載せた。現在の大町市美麻千見が舞台となる話。強要された機織り娘(嫁)が入水して大蛇となるのは定型なのでよい。問題は、この嫁が「日を招いている」点だ。早乙女の話と機織り娘の話は似た構成を持っているのだが、実に日を招く早乙女のように日を招く機織り娘の話もある、ということだ。

今はひと先ずその典型を語っている事例として引いた。