巨人の足跡

原文：神奈川県横須賀市

長沢に巨人の足跡だと伝えられていた小さいながら干害にそなえての池があった。

昔は、松林におおわれた静かな高台で、四季をとおして小鳥の楽園になっていた。

この池は「堰」の役割をするほど大きなものではないが、スケールの大きな話しが残されている。

昔、この近くに「デーボコ坊」という大入道がやってきたとき三浦富士をひとまたぎにまたいだが、房州へ渡るのにちょっとためらって、力を入れなおして海を越えて房州までひとまたぎに渡ったので、そのときにできた「デーボコ坊」の足跡がこの池であって水はあとから雨がたまったものだと伝えられていた。この池はよく見ると、なるほど人の足跡のような形をしていた。

「デーボコ坊」のような巨人の足跡についての伝説は全国に多い。地方によって呼び名が少々違っている。

千葉ではデーデーボ、東京ではダイダラボッチ、栃木ではデイデンボメ、埼玉ではダイダラボッチと言うように関東だけでも異なるが内容はほとんど同じである。

『北下浦郷土誌』
（北下浦郷土誌編集委員会）より