朱鶴の穴探検

神奈川県横須賀市


佐島の七不思議の一つである、朱鶴の穴へ入ったことがある。場所は、佐島の石川水産がある辺りで、割合と大きな洞窟があった。その奥に、人が一人、やっと通れる位の穴があって、それを通り抜けると中は広くなり、その天井に真っ赤な鳥の絵が描いてあった。

中は、とてもひんやりとして、狭い入口から差し込む光の中で、ぼんやりと鳥の姿が見えた。とても気味が悪く、長くいられなかった記憶がある。

その後、ここに海軍の防空ごうのようなものが造られて、全部けずり取られてしまった。(佐島・福本政司)

『古老が語るふるさとの歴史 西部編』
(横須賀市)より

追記

佐島の石川水産というと、天神島のちょうど真北あたりになる。天井に赤い鳥の描かれた海蝕洞窟などといったら尋常のものではなく、周辺の信仰などに与えた影響というのもただならぬものがあったろうと思うが、上の話以外には全く聞かない。

しかし夢のような話かといえば、朱鶴と名があり、また佐島の七不思議に数えられていたともあり(他には磨墨の蹄跡に水の湧いた井戸などもあったという)、その存在は確かであったようだ。

竜蛇の話ではないが、非常に気になる。鶴といえば直ちに考えられるのは(土地柄からしても)八幡だが、近くの崖上にある社は神明社である。あるいは天神島のほうに何かあったのか。