ピカピカの蛇を見て金が入る

原文:神奈川県川崎市高津区


──あの蛇とかは?─

えっ?

──蛇?──

あっ、蛇はいた。(さも不思議そうな口調で)主人がね、あの、職を退く時ね、ピカピカピカピカした、蛇がね、一週間か十日ね、出たんですよ。蔵のこっちの方へ。こりゃあ何か、お金でも入るのかなぁ、と思ってたの。ほんだって、誰にも言わないけど。したら、主人が帰って来て、昼は一週間に一遍か帰って来ないから。
「あの、職辞めることにした」
って、八十二歳になるから四月十二日が誕生で。うん、あれですね
「職辞めることにした」
って言う。あんまり、こんな大金は入らないけど、あの、お金入りましたよ。それで主人が言ったら、それっきり、毎日出てたんですよ、ピカピカ、金のような蛇が。あんまり太くないんだよ、こんな大きくはない。このくらい(身振り)なね、蛇だの。それから、主人があの
「辞めることにしたよう」って言って
「今月いっぱいで辞めるんだ」
って言うと、それっきり引っ込んじゃったの。ほんとかと思った。

──ああそれまでは毎日見られたって言うか?──

毎月じゃないの(聞き違い)、一週間ぐらい出てたの。

──一週間?──

うん。

──続けて──

うん。

──へえ、そうなんですか──

ピカピカ、キラキラした、光った立派な蛇、あんまり太くないんだよ、こんな(身振り)太くないの。そのね、話聞いたらすぐに引っ込んじゃったの。それっきり出なかった。きっと、月曜ぐらいから土曜日ぐらいに出てたのかねぇ。それは私ね、もう本当に、本当のことですよ。うん。

(高津区千年 農業 女性 東京都品川区出身 明41年)

『川崎の世間話』「川崎の世間話」調査団
(川崎市市民ミュージアム)より

追記