磯子の巨人譚

原文:神奈川県横浜市磯子区


磯子の真照寺の裏山に、萱ばかりで樹が一本も生えぬ禿山がある。あたり一帯の樹林と比べて、ここばかりは際立って禿山なのである。苗木を植えたがどうしても育たぬという話であった。

大昔、ダイダラボッチという巨人が、東の方岡村から歩いて来て、此の山を跨ぐ時にどうした弾みか尻餅をついてしまった。そこで木無しの禿となった。又この巨人は海岸の岩を一蹴して安房の國へ飛び越えて行った。磯子の海岸が埋立てられたので今は見えぬが、もと引汐の時には巨大な岩磐が見え、而もその岩上には右の巨人の足跡が残って居るという伝えであった。即ちこの岩を踏み石として、大に勢をつけた時、ついた足形の痕としたのであろう。

(以下、全国各地に巨人譚があること・略)

『横浜の伝説と口碑・上』栗原清一
(横浜郷土史研究会)より

追記